2017.9.1-4 黒部 上ノ廊下~源流部

日付 2017/9/1(金)-4(月) 参加 穴井(CL・投稿)、瀬沼、海保、山口、冨澤
アルバム:https://photos.app.goo.gl/tVTFZHp4iuy2KdnB2
行程:9/1 扇沢-黒部ダム-ロッジくろよん-平ノ渡小屋-奥黒部ヒュッテ-東沢出合-下ノ黒ビンガBP
   9/2 下ノ黒ビンガBP-口元ノタル沢出合-広河原-上ノ黒ビンガ-金作谷出合-岩苔小谷出合-立石奇岩-BP
   9/3 BP-B沢出合-薬師沢小屋-赤木沢出合-五郎沢出合-源流碑-雲ノ平
   9/4 雲ノ平-薬師沢小屋-太郎平小屋-折立

北アルプスのほぼ中央に位置する鷲羽岳を源流に発し、清らかな水を集める流れはときに激流となって黒部の谷を一気に流れ下る。
遡行距離は30kmを優に超える沢ヤ憧れの上ノ廊下はやはり雄大な渓谷美を誇る銘渓でした。
両岸が深く切れ込んだ上ノ黒ビンガ付近の通過

今年の夏合宿山行として企画し、参加メンバーはホラ貝、丹波川本流などでトレーニングを積んだものの、直前になって台風15号が発生。計画敗退が危ぶまれたが、現地で行ってみて判断しよう、ダメなら読売新道に転進でも構わないというメンバーの心強い後押しで決行することに。出発直前で当初リーダーの体調不良による離脱に加えて、出発前の小屋では長雨での増水もあり今年は28パーティ中、突破したのは1、2パーティだけという話もあり、相応の覚悟での入渓となったが。。

9/1 
直前まで台風の進路が読めず、関西方面の沢への転進案もあったので東名秦野PAに0:30に集合して話し合う。メンバーの後押しで決行しようということで車を逆方向へ走らせ長野へ向かった。安曇野のコンビニで車を降りると震えるような寒さを覚える。台風の影響ですっかり秋の空気に変わったようだ。ここでもう一度、計画を話し合い折立から赤木沢に転進する3人と、とりあえず奥黒部ヒュッテまでダメ元で行ってみる5人に分かれることになった。扇沢まで送ってもらい、トロリーバスで黒部ダムへ上がる。天気予報は予想外に向こう4日間の好天を約束してくれていた。
トンネルを抜けてダムの堰堤に出ると晴天が広がる
あとは水量が気になるところが、この天気にテンションが上がらないわけもなく足早に歩を進める。
堰堤を対岸まで渡ると平ノ渡小屋までは4時間の湖岸歩き。入り組んだ地形がなかなか先に進ませてくれない。
ようやく平ノ渡小屋に着いたのは11時を過ぎた頃。対岸への渡船の時間は10:00、12:00…と2時間おきだが、9月の扇沢トロリーバスの始発は7:30なのでよほど早く歩かないと10時の渡船には間に合わないだろう。小屋の主人と暫く話してくつろぐ。やはり今年の上ノ廊下は水量が多く厳しいようだ。2日前まで雨続きだったらしい。
12過ぎに渡し船に乗って対岸へと向かう。渡し場に先にいた2人組と話をすると我々と1日遅れで明日、入渓するとのこと。過去4回は敗退して東沢に転進しており、今回こそはと意気込んでいた。 
 10分ほどの渡船で対岸へ渡る。
対岸に渡ってからは2時間半ほどの湖岸歩きが続く。枝尾根のアップダウンに重荷が応えるが、黒部川の流れはようやく川らしくなり気持ちも高まる。
14時過ぎに長い歩きを経て奥黒部ヒュッテに到着。届出を出す為に荷物を降ろして小屋の主人に話をするとやはり今年は厳しいとの返事が。「この2週間は釣り人も含めて沢に入ろうとした者は誰もいない。沢まで降りてみれば諦めがつくぞ。」
この天気でやすやすと敗退するわけにもいかないので、水量を確かめるため男性陣で沢まで降りてみることにした。
上ノ廊下最初の渡渉点。全員オンサイトなので正直増水しているかどうか分からなかった。見た目は増水はしていない感じだったが、取り敢えず入ってみると見た目より明らかに水圧が強く足がさらわれそうになる。加えて氷水のような冷たさだ。これはヤバい。。と内心思いながら振り返ると上背のある瀬沼さんが一言「えっ。どこが増水してるの?」
自分が腹まで浸かってきたところを腰までも浸かっていない、180cmを優に超える心強いリーチ。
ここに来るまで水量が気が気でなく、実際の水量を見て敗退を覚悟しそうになったが、これなら突破できると確信に変わった。
小屋に戻り、主人に行けるところまで進むことを告げる。駄目なら無理せず明日引き返してきなさいとのこと。時間は15時を過ぎていたが、渡船で一緒になった2人組にも見送られていよいよ上ノ廊下に入渓。
最初の渡渉からやはり女性陣が苦労するが、瀬沼さんの背後で水圧をかわす変形スクラム渡渉が威力を発揮し、難なく渡渉できた。沢登りは上背のある男が正義だ。
熊ノ沢出合からは河原歩きに同じような渡渉が何回か続き、途中一箇所ロープを出した。
順調に進み、17時に下ノ黒ビンガのすぐ手前で右岸に良さげなBPを見つけ、幕を下ろすことにした。
初日を無事に終えて乾杯。なんと自分以外の全員が初の泊まり沢で上ノ廊下とは何とも贅沢な。。
谷を吹き抜ける風が冷たいが空気は乾き、焚き火は勢いよく燃えた。

泊まりの沢が初めてが4人もいたので、気が気ではなかったが皆で手際よくタープを張り焚き木を集めてくれた。初日の夜は寝不足も相まって酒が入ると寒さも忘れて眠りにつく。秋の気配に虫もすっかりいなくなり快適な夜だった。

9/2
2日目の朝、河原の岩をよく見ると水量は少し減っているようだ。今日は核心の口元ノタルを通過して上ノ黒ビンガから金作谷あたりまで目指すことにする。準備を済ませて5時半に出発。
下ノ黒ビンガは堂々と立ちふさがり、上ノ廊下は左に大きく屈曲する。
この日も朝から渡渉の連続。終始この上下に並ぶスタイルで乗り切った。ストックも役に立った。
口元ノタル沢までへつりや渡渉が連続する。ルートファインディングを誤り渡渉点を見誤ると、途端に時間を消費する場面に出くわすことも。
7時過ぎに左から口元ノタル沢が出合うといよいよ最初の核心部に差し掛かる。谷は急に狭まりゴルジュ状となる。
トポでは左岸からとあったが、右岸をヘツって前進できた。奥の白波が立っているところが悪そうだ。
見た目通り進むに連れて足がつかなくなり、ロープを出すことに。自分が右岸沿いに進み飛び石を交えて突破した。ここからは左岸に移れば後が楽だったのだが、飛び石を見逃しそのまま右岸沿いに進んだ。
後続はロープで引張り上げるが、水量をまとも受けるとかなり重く難儀した。
その後、右岸沿いで行き詰まり、瀬沼さんが際どいクライミングと飛び石を交えて左岸に渡る。対岸からロープを投げてくれて引き上げてもらい突破。フォローも水流を読みながら息を合わせて飛び込む。流されても滝などはないので安心できるが、巨岩に挟まれたりすればどうすることもできないだろう。
廊下沢を過ぎ、谷がいっそう開けてくると広河原につく。日が差してきて朝から冷えた体には有り難い。生粋の沢ヤ、山口さんはもう暑いから水に入りたいとか口にしていてこの時ばかりはどうかしてると思った。しばらく平坦な河原を歩いて進んだ。
気持ちの良い開けた河原を進む。遠く先には薬師岳の稜線

右からスゴ沢が出合うと谷は再び狭くなる。上ノ黒ビンガが近くなってきたはずなので泳ぎの前に一旦、荷物を下ろした。時間はまだ9時を回っておらず、順調に進めば金作谷は昼過ぎに通過できそうだ。
休憩を挟んですぐに谷はいよいよ狭くなり、上ノ黒ビンガに差し掛かる。深く切れ込むように切り立った両岸は数百メートルの高さで立ちはだかる。
途中で見つけたダブルクラックに思わず吸い寄せられる。下部は5.9、上部はシンハンドが延々と伸びていて、5.11以上は有りそうだ。
いくつかの渡渉を交えつつ振り返ると上ノ黒ビンガが壮大な高さで立ちはだかる。上ノ廊下を代表する素晴らしい景観に写真撮影が捗りすぎて、なかなか歩が進まなかった。
両岸からは思わず見とれてしまうような優美なスダレ状の滝が流れ落ちる。
谷が再び開け、荒れた谷底をしばらく進むと金作谷が左岸から出合う。上部には巨大な雪渓が残っており、万が一のエスケープルートをこの谷に取るとしてもかなりの難儀を強いられそうに思えた。時刻はまだ10時過ぎなのでこのまま先まで進むことにした。
金作谷の先でスゴ淵と呼ばれる第2核心へ突入。足がつかず水の流れは速かったが、ここは瀬沼さんがロープを引いて泳ぎで突破。
後続はロープで確保してもらい対岸へ辿りついた。
その後もひたすら泳ぎや渡渉が続き、体の言うことが効かなくなるほどに寒い。自分はウェットスーツを持ってこなかったことをひどく後悔した。
ようやく河原状に乾いた砂地を見つけて休憩を取る。一同、日を浴びて暖まった岩に張り付いてしばらく離れることができない。
この淵は左岸をへつりで突破。フェルト底には少し悪い。腐ったハーケンに身を預けつつへつった。
スゴ淵を過ぎたあとも上ノ廊下はまだまだ水量を落とすことなく流れ注ぐ。この辺りからなるべく泳ぎを避けへつりたかったが、容赦なく泳ぎや激流の渡渉は続いた。
ここまで来る頃には冨澤さんも渡渉や泳ぎをマスターしていました。
岩苔小谷出合。左が岩苔小谷、右が本流。

赤牛沢の流れ込みを確認するとすぐ先では岩苔小谷が右岸から出合う。岩苔小谷は薬師沢と共に水量の多い沢でありここから上ノ廊下の流れはようやく穏やかになった。時間は13時を過ぎていたので、昼食がてらこの日のBPを話合うことに。すぐ先のプール状の河原で腰を下ろした。魚影が濃かったのでテンカラ竿を垂らしてみたが、イワナは深い淵の底に姿を眩ませていった。皆の顔にも疲労が見え始めていたが、時間はまだあるので先に進むことにしたのは正解だった。
この先もゴルジュは続き、外形した右岸バンドのへつり。丁寧に足を置いて進む。ラバーソール組はフリクション抜群で難儀することはなかった。
バンドはすぐ先で切れていて、ここは空荷になりぐらつくハーケンに身を預ける。
最後の泳ぎで左岸に移り、高巻くと立石奇岩は近い。その後は楽しいルートファインディングを交えつつ飛び石で突破する場面が続いた。
立石奇岩の手前でイワナが潜んでいそう淀みがいくつかあったので、今宵のつまみも兼ねて自分は竿を出しながら皆の後を追うことにした。
予想通り飛び出した体高のある尺イワナ。凛々しい顔は黒部川によく似合う。
1時間ほど歩いていると、堂々とした立石奇岩が迎えてくれた。ここでようやく安堵を覚える。この先で良いBPを探しつつ渓谷を進む。
16時過ぎに立石奇岩の先に良い河原状を見つけたので、タープを張り2日目のBPとした。
予定よりもかなり早く無事に遡行できる目処が立ち、イワナをつまみに乾杯。流木も豊富でこの日も快適な夜となり、遅くまで酒が進んだ。
塩焼きと刺し身は絶品。

9/3
いよいよ上ノ廊下の遡行も佳境に入った3日目の朝。ゆっくり起きて6時に幕場を後にする。
河原状を過ぎると最後のゴルジュ帯が現れるが、岩苔小谷を過ぎて以降、水量は見るからに減ってきたのでペースを上げて遡行する。
長い沢旅も3日を過ぎればチームワークも抜群だ。
屈曲を繰り返しながらいつまでも続く渓谷を進む。
B沢出合の手前は左岸の高巻きから。懸垂5mで降りると右岸から大東新道が合流。地図を見て一般道にしては悪いなと思っていたら、近年の大水で破線ルートに様変わりしているようだった。
屈曲したゴルジュ帯を抜けると沢は開け、遠くには北ノ俣岳から黒部五郎へ続く稜線が確認できた。いよいよ薬師沢の小屋が近づく。
相変わらず沢の水は冷たいがこの日も朝から果敢に水線突破を試みる山口さん。自分は真っ先に巻いた。
立石のBPから2時間ほどでようやく小屋に掛かる橋が見えると一安心。敗退も辞さない覚悟で計画を押してくれた皆と好天を捉えられたおかげで今年2~3?パーティー目の遡行となった。
報告を兼ねて小屋に立ち寄る。好天の日曜日ということもあり、多くの登山者で賑わっていた。
今後の行程を話合う為、小屋で補給を兼ねて大休止。計画段階ではこのまま折立に下山の予定であったが予定よりも1日早い為、赤木沢か奥ノ廊下の源流部まで遡行する案が出た。源流部のトポはなく地形図を眺める限りは赤木沢の倍の距離はありそう。天気はあと1日は持ってくれそうだ。赤木沢も魅力的ではあったが、せっかくなら源流部までの完全遡行で締めくくろうという山口さんの意見で源流部まで遡行することに。
小一時間の大休止を経て小屋の裏手のはしごを伝い、再び入渓。日は高くなり癒やし系の景色が続く。
1時間の歩きで赤木沢出合いに着く。ナメの先には穏やかなプールが広がりいつまでもいたいくらいの景色だ。息を飲むような美しさにしばらく写真を取ったりして和んだ。ここまで癒される景色はそうそう無い。
皆の顔も思わずニヤけが止まらない。
赤木沢の出合いを過ぎるといくつかの支沢が入る。祖父沢の出合いは1:1なので間違えないよう右に進む。
ここからはひたすらゴーロの河原が続き、休みを入れつつ登った。
雄大な黒部川の流れもようやく源頭の雰囲気を成す

薬師沢から6時間ほどで一般道との渡渉点に出合い15時に遡行を終えた。
源頭の碑を探すがなかなか見当たらず右往左往。前はこのすぐ脇に小さな碑があったはずだが、よく探すと撤去された跡があった。
諦めて雲の平に上がろうとしていたが、同じく碑を探していた登山者が三俣蓮華よりに一段上がったところで見つけたことを知らせてくれた。記念に1枚写真を取り無事に遡行を終えることができた。
渡渉点からは急登を経て雲の平に上がる。夕方遅くにテン場に到着。海保さんに幕営の準備を頼み、山口さんは20分離れた小屋への買い出し、自分は携帯で山岳会へ無事の遡行を知らせる為、高天原分岐の稜線まで足を伸ばした。テン場に戻ると遅れていた瀬沼さんと冨澤さんも着いていた。
最後の夜は無事の遡行を祝いAOONIビールで乾杯。海保さんも満足げな表情。標高がある雲の平では流石に寒く、焚き火も無かったのでガス全開で暖をとった。つまみは全部炙って温めた。
沢装備なのでもちろんテントはなく、タープでの幕営。
この日は今夏一番の冷え込みで氷点下まで下がり、シュラフカバーの2名にとっては地獄の夜となった。

9/4
いよいよ最終日。朝から寒いがあとは下山を残すのみ。素早く朝食を済ませて準備を整えた。
朝焼けに包まれる雲の平

雲の平から薬師沢に降りるまでの木道は霜が降りてツルツル、何度も転びながらの歩きとなり、山行最大の核心部であった。
薬師沢からは急ぎ足で登り返し9時前に太郎平小屋に着く。薬師沢小屋で上の小屋でも報告するように言われていたので、ここでも山岳警備隊の方に報告を済ませる。世間は平日の月曜日だというのに相変わらず登ってくる登山者は止まない。
ここからは1時間半で折立まで下山。駐車場で待っていてくれた赤木沢班と合流して温泉へ向かい4日間の汗を流した。帰りに富山によって寿司で打ち上げを行い山行の締めとした。
好天にも恵まれ皆で頑張って良い山行になった。参加してくれた皆さん有り難うございました。